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【前穂・奥穂】2日目後半・ジャンダルム、涸沢岳へ

データリスト
日程
2015年7月中旬(2泊3日・岳沢小屋・涸沢、共にテント泊)
天気
快晴
コースタイム
10時間 10分(7.2km)
実測タイム
7時間 44分
タイム乖離率
91%
装備
夏山テント泊装備(70L・20kg)、要ヘルメット
交通手段
自動車・沢渡駐車場(有料)

アルプスに登れるだけの体力をつけ、北アルプスの岩場にも慣れた頃になると、一度は意識するであろうジャンダルム。難所と言われる穂高の中でも別格扱いの場所。ヤマレコやブログを読み漁り、ルートを頭に叩き込み、いまここに立っている。天気は良い、風もない。今しかない。山頂に荷物をデポし、可能な限り軽装になってジャンダルムに向かい歩みを進める。

憧れのジャンダルムへ

奥穂高岳の山頂からジャンダルムに向かうとすぐに馬の背がやってくる。歩いて見ると、本当にすぐだ。広かった稜線がナイフリッジへと変わり、気づいたら左右がすっぱりと切れ落ちた岩場になる。たしかにこれはヤバい。足がすくみそうになりながら、少しずつ、少しずつ三点支持でそろりそろりと降り進む。最後の急な下りは信濃(長野)側からの方が降りやすいが、上からだとよく見えなかったため、足場が見えていた飛騨(岐阜)側から降りて行った。これが失敗だった。岩は掴みやすく、足は母子球より先はしっかりと岩に乗っているため、安定感はバッチリだ。ただ、高い。あまりにも高い。ビルの非常階段の手すりを乗り越えて、その外側をそろりそろりと歩いている感覚だ。しかも下を見ないわけにも行かないため、嫌が応にも心拍数があがっていく。幸いにも岩は滑るような形状ではないため、手汗をいくらかいても安心して進めるのはよかった。

怖かった馬の背を終え、これで難所は終わったかな?と気を緩ませそうになるがそれはいけない。意外な伏兵、ロバの耳だ。ブログ等を読んでいると、ジャンダルム簡単、馬の背怖い、このような意見を多く見かける。行ってみた今、たしかにそう思う。ただ、行ってみて分かったことはロバの耳も十分に怖いということだ。しかもルートをしっかりと見極めないと登るのが難しい。馬の背は高度感があって怖いだけであるが、ロバの耳は登り、下りとも技術的に不安があると相当に心許ないと思う。掴みやすい石、崩れない足場をしっかりと確かめながら安全に進んで欲しい。

ついにあのジャンダルムに

ロバの耳を超えるともうジャンダルムは目の前だ。鎖場を乗り越えるとジャンダルムの基底部にたどり着く。そのまま直登することも可能だが、クライミングに自信がない限り、無理をせずそのまま左側(信濃側)を進み、西穂高側から登ると良いだろう。マークも多く付いているため特に迷わずたどり着けると思う。ロバの耳より少し緩やかな程度の岩場を登るとあっという間に頂上だ。会いたかった天使が目に飛び込んでくるだろう。

到着してまず思ったのが、看板多すぎないか?ということ。この日は天使を入れて4つもあった。誰が追加するのだろうか。看板が無い!という登山者の報告を受けて再設置しに来たものの、何だあるじゃん!でも持ってきてしまったし置いてこうみたいな感じだろうか。とりあえず天使が一番人気なのは間違いなさそうだ。この日も山頂で出会った人はみな天使とともに写真を撮ろうとしていた。

ジャンダルムから奥穂高岳へ

時間もないのでそろそろ戻らないとと思うものの、ジャンダルムから戻る道のことを思うと腰が重い。ロバの耳も怖いし、馬の背も怖い。今度は登りだから大丈夫、と頭では分かっていても脳に植え付けてくれた恐怖はなかなか拭えない。ジャンダルムから帰る道を覗き込むとその異様さがよくわかる。

重い気分のまま帰りの路を奥穂高へと進む。やはり一度通るとだいぶ違う。あとやはり岩場だと登りは楽だ。だいぶ気持ちが回復してくる。ただ、そんな気分も馬の背にくるとまたずーんと重くなってくる。深呼吸の後、今度はみなさんおすすめの信濃側から取り付く。何だこれ。全然違う。上からだと足場が見えづらいだけで、手に掴む岩、足場とも非常に大きく安定している。なるほど、これはおすすめのルートだ。

ただ、安定しても怖いものは怖いので、馬の背を乗り越えるとどっと疲れが出てきた。今日は北穂の小屋まで行きたかったけど本当にいけるのだろうか。

奥穂高岳から穂高岳山荘へ

荷物を回収し、若干の興奮と軽い疲れを感じたまま、穂高岳山荘へと下って行く。積雪期は支尾根に誤って入りやすいと言うが、夏道が出て入れば問題なくわかるだろう。ただ、天気が悪い日や視界が開けていないような日には十分に気をつけた方が良いだろう。

山荘への最後の下りは鎖場と梯子が連続するエリアとなる。高度感もあるため、気をつけて進みたい。

穂高岳山荘から涸沢岳へ

この時点でだいぶ疲れを感じていたが、涸沢岳に登ってからルートを決めようと、そのまま涸沢岳を登る。涸沢岳への道はここまでの道と比べると非常に登りやすく、山頂までもすぐだ。穂高岳山荘に泊まる場合には夕陽、朝日はここから見ると気持ち良いと思う。

涸沢岳から北穂高岳方向を覗き込む。ものすごい落差だ。一気に諦めがついた。涸沢に下ろう。すぐに決断できた。それぐらい急なアップダウンを行かないと北穂高小屋にはたどり着けない。

一通り景色を堪能した後、踵を返し、来た道を穂高岳山荘に戻る。

穂高岳山荘からザイテングラートを涸沢へ

涸沢岳から穂高岳山荘を降り、ザイテングラートに入った時は、もうこれであとちょっとだーともう終わった気分になっていた。頭のどこかで涸沢からの奥穂高岳ルートなんて余裕だろう等というちょっとした思い上がりもあったかもしれない。穂高は険しい。そうどのルートでも。

ザイテングラートの道は普通に急登である。疲れた身体には応える。道自体はそこまで広くないため、すれ違う際には注意が必要だ。毎年多くの事故がここで起きており、その多くはすれ違い時に誤って転落するという。特に下りの場合には疲れも溜まっているため、後ろがつかえていたとしても慎重に進むべきであろう。

ザイテングラートを終えると、道はだいぶ緩やかになる。ただ、この年は7月中旬でも雪が多かった。見通しがきいていれば問題ないが、見通しがきかない場合には迷いやすそうな場所なので一度動画で雰囲気を掴んでおくと安心できると思う。実際、この日も涸沢から登って行くひとたちがだいぶ違った方向に登っており、遠くから道を尋ねられた。ザイテングラートにうまく取り付けないと登るのはだいぶ困難だと思われる。登る人も降りる人も注意が必要だ。

長かった一日が終わる、涸沢ヒュッテに到着

雪道を歩いてやっと涸沢小屋に到着した。もうここで良いかと思う気にもなったが、一度は泊まってみたい涸沢のテント場に向かった。雪原を横断し、ヒュッテで手続きをする。売店も充実しており、噂通り良いテント場だと思う。テントを張り、休んでいるとほどなくして雨が降り始め、以降はずっと風の強い1日だった。朝起きたらフライシートが旗のようにテントの上で風に吹かれていて、その強さに驚いた。

(二日目後半了)

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