マルチピッチ
マルチピッチとは、リードクライミングの一形式であって、ルートの中途でリードクライマーがビレイヤーと役割を交代し、ビレイヤーがリードクライマーのところまで上がるということを繰り返す形式でのクライミングのことをいう。
通常はロープの長さ(シングルロープの場合、降りることを考えるとロープの長さの半分)以上のルートを登るときに行う形式である。
通常は2人で行うが、ダブルロープを使用すれば3人でも可能である。なお、理論上は4人以上でも可能であるが2人x2ペアに分かれれば良いだけのため、特殊な場面以外では4人以上にはならない。
役割を交代する回数+1がそのマルチピッチでのピッチ数になる。例えば、2回役割を交代する場面があった場合、そのルートを3ピッチ(3Pとも表現する)と表現する。
方法
常に同じ人がリードクライマーとなる方法(スタッカート)、ピッチの度にリードクライマーとビレイヤーが交代する方法(つるべ式)とがある。
注意点
マルチピッチクライミングは 2ピッチ目以降は地上から大きく離れるため、登れずに撤退する場合も懸垂下降で地上まで降りる必要があるなど、必要とされる技量も求められるし、時間もかかる。
また、ギアを落としてしまうと通常は拾えないため、確保器の予備を持参するなど、ギア面でも異なる配慮が必要となる。
エスケープルートを調べておいたり、時間や天候次第で引き返すポイントについてあらかじめ決めておくといった事前準備が特に重要である。
国内の有名なマルチピッチルート
以下のようなルートがマルチピッチルートのある岩場として有名である。
関東近県
- 二子山中央稜
- 子持山
- 城山南壁
- 海金剛
奥秩父、南アルプス
- 小川山
- 瑞牆山
- 甲斐駒ヶ岳
- 戸台
北アルプス
- 錫丈岳
- 屏風岩東壁
- 唐沢岳幕岩
- 丸山
- 明星山
西日本
- 御在所岳
- 雪彦山
- 三倉岳
結び替え
結び替え(むすびかえ)とは、リードクライミングの終了点において、設置されているチェーンやリング等にメインロープを通すことでカラビナ等のギアを残置することなくロワーダウンしてもらうために、安全にロープを結び替えるための技術、またはその技術の実行のことをいう。
トップロープクライミングではそもそもすでに終了点にロープがかかっている状態のため、結び替えは発生しない。ただ、外岩でトップロープクライミングをし、アンカーを撤収する場合に結び替えができるとロワーダウンで降りてこられるため、利便性の観点で使用されることはある。そのため、トップロープであれば使用しないというわけではない。
使用場面
基本的には外岩でのみ問題となり、ジムでのリードクライミングでは問題にならない。なぜならば、ジムには終了点にカラビナが設置されているからである。カラビナにロープをクリップすればロープをあえて外すような危険な行為を行う必要は一切ないからである。
他方、外岩の終了点にはリングやチェーンのみで一般的にはカラビナがないため、ロープがクリップできない。そのため、ロープをリングやチェーンに通す必要が出てくる。その過程こそがロープの結び替えである。
方法
大きく分けて二つの方法がある。終了点がチェーンしかなくロープを折り返した状態だと通すことができないような場合を除き、原則として下記の基本的な方法を使用すべきである。
基本的な方法
上記の動画のように、セルフビレイを取った後、ロープの折り返しを作った状態でチェーンやリングに通してビレイループにロッキングカラビナとフィギュアエイトオンバイトなどで接続し、ビレイヤー側のロープを引っ張り問題ないことを確認したうえで、タイインループに結線した当初のフィギュアエイトフォロースルーを外す。その後、ビレイヤーに声がけをし、ロワーダウンする。
例外的な方法
先にフィギュアエイトオンバイトを作り、当初のフィギュアエイトフォロースルーを外してロープの先端をチェーンに通し、再びフィギュエイトフォロースルーで接続する。どのようなアンカーでも使用できるためこちらの方が優れているように思えるが、不意にセルフビレイを取っているクイックドローが外れた場合にはこの方法の方が危険に晒される可能性が高いこと、そして、基本的な方法の方が素早く構築できることから、可能な限り基本的な方法を使用する方が良い。
注意事項
結び替えの間、ビレイヤーはビレイ状態を継続すべきである。セルフビレイを取った後はビレイしなくても良いように思えるが、コミュニケーションミスを防ぐべきであること、ビレイヤーが最終的なバックアップとなっていること、そして、システムを可能な限りシンプルにすべきこと、以上を踏まえると最終的にロワーダウンする直前のテンションを求める掛け声までの間、ビレイヤーはビレイ状態を継続すべきである。
メインロープ
メインロープとは、フリークライミングにおいてハーネスに結びつけたロープのことをいう。主に、フリークライミングの終了点等でセルフビレイを取る際に、クイックドローやスリング等で取ることとの対比で「メインロープ」という用語が使用される。
なお、ロープを複数携行している場合に、主に使用するロープの意味で、サブロープと対比してメインロープという用語が使用されることもあるため、文脈によって若干意味が異なる点には注意が必要である。