ナッツ
ナッツとは、フリークライミングのうち、アルパインクライミングやトラッドクライミングにおいて使用される一時的な中間支点を構築するための器具であって、岩のクラックや穴等に引っかかることで抜けることを防止するためのものをいう。なお、エイドクライミングにおいては、登攀用に使用することもある。
種類
海外を中心に多くのメーカーが製造している。代表的なものとしては下記のようなメーカーの商品がある。
BlackDiamond(ブラックダイヤモンド)
「ストッパー」の名称で展開されている。「ストッパー」は、台形状で側面が湾曲している形状が特徴的である。「マイクロストッパー」はフレアクラックやピトンスカーに有効な非対称台形断面が採用されている。
また、六角形の「ワイヤードヘキセントリック」は4種類の向きにセット可能であり、ひとつで複数のサイズのクラックに対応できる点が特徴的である。
Metolius(メトリウス)
台形型のナッツ「ULAカーブナッツ」(ULA: ウルトラライトアシンメトリック/超軽量非対称)は、BlackDiamondの「ストッパー」がワイヤー方向に対して直行方向にカーブしているのに対し、これは平行方向にカーブしている。そのため、上下左右全体的にテーパーが強くなり、あらゆる方向で効かせやすくなっているのが特徴的である。
小型のものは「アストロナッツ」という名称で展開している。
また、六角形の形状の「ウルトラライトカーブヘックス」もBlackDiamondの「ワイヤードヘキセントリック」が直線的であるのに対し、曲線的になっている点が特徴的である。
DMM(ディーエムエム)
「ウォールナッツ」「マイクロウォールナッツ」の名称で展開している。形状はBlackDiamondの「ストッパー」と似た台形・直行方向湾曲形状だが、膨らんだ側の中央にワイヤー方向に対して平行方向溝が入っているのが特徴的である。
Wild Country(ワイルドカントリー)
「ロックス」の名称で展開されている。見た目はBlackDiamondの「ストッパー」と非常に似ている。
OmegaPacific(オメガパシフィック)
「ウェッジ」の名称で展開されている。ワイルドカントリーの「ロックス」同様、見た目はBlackDiamondの「ストッパー」と非常に似ている。
CAMP(カンプ)
「プロナッツ」という名称で展開されている。形状はBlackDiamondの「ストッパー」と似ているが、ワイヤーと直行方向に溝が切られているのが特徴的である。
サイズと色の関係
メーカー内ではカム・ナッツで統一感のある色選択がされているが、メーカー相互ではそのような関係性は見られない。そのため、カムはBlackDiamondでナッツはDMMなどという選択をすると色とサイズの関係に少し戸惑いが出るおそれがある。
ただ、カムとナッツそれぞれでそもそも適用されるべきクラックのサイズ感が異なるため、そこまで気にする必要もないと思われる。しかしながら、複数のメーカーをナッツ同士で混ぜたり、カム同士で混ぜると確実に混乱してくるので注意が必要である。
カムとの相違点
ナッツ以外の主要なナチュラルプロテクションとしてカムがある。カムは開き具合をハンドルで調整することである程度の幅に柔軟に対応できるが、ナッツの場合はサイズが決まっているため、そのクラック等に合わせたナッツを使用する必要がある。このように能動的にサイズを変更できず、「受動的」である点を捉えて、ナッツはパッシブプロテクションとも呼ばれる。
メリット
基本的にはカムの方が優れている部分は多いが、下記のような点はナッツのメリットである。
- 軽量
- 安価
- クラックの形状によってはカムよりも安定感が高い
デメリット
デメリットとしては下記の点が挙げられる。
- 使用できる岩の特徴が限定的
- 取り外すのが大変(=残置になりやすい)
- 慣れるまで適切なサイズの選択や設置に時間がかかる
- 特に小さいサイズは耐荷重が小さい
関連項目
- アルパインクライミング
- エイドクライミング
- カム
- トラッドクライミング
- ナチュラルプロテクション
日本アルプス
日本アルプス(にほんあるぷす)とは、北アルプス(飛騨山脈・ひださんみゃく)、中央アルプス(木曽山脈・きそさんみゃく)、南アルプス(赤石山脈・あかいしさんみゃく)の総称である。