登山では必須ともいえるリュックサック。日本の登山用語はドイツ語由来のものが多いこともあり、山ではザック(独語:sack)と呼ばれることがほとんどです。英語圏ではバックパック(backpack)と呼ばれることが多いように思います。
登山をしていく中で「もうちょっと大きいのが欲しい」「もうちょっと軽いのが欲しい」というのが分かってくればあとは自分の希望にあったザックを探すだけです。ただ、一つ目や二つ目のザックはどのように選んで良いのかがわかりづらいのも事実です。
私は何かと理由を付けてザックを買うのが好きで、今までで20以上のザックを使ってきています。年間を通じて使用するのはそのうちの10個ぐらいで、よく使うのは4個か5個です。とりあえずの万能的なひとつというのは地味に難しいですが、概ね以下の基準に従ってはじめのザックを選ぶと良いと思います。
2. サイズは30-40L程度である
3. 背負ってみて違和感がない(ウエストベルトをしっかりと締めた状態)
4. 自分好みのデザインまたは色である
目次
登山用として信頼できるメーカーのものを選ぶ
細かい性能や機能の違いはあるものの、__登山用として信頼できるメーカーのものであれば基本的には何を選んでも大丈夫です。個人的な使用経験でお勧めできるメーカーのみを紹介したいと思います。
特に登山にこれからはまっていきそうな人には本格的なザックを作っているメーカーをおすすめします。あわせて個人的におすすめのモデルも紹介したいと思います。
ミレー(Millet/フランス)
日帰り用の小さなザックから長期縦走用の大型ザックまで、夏冬を問わず、幅広いバリエーションのザックがラインナップされています。定価はそれなりにしますが、セールになることも多く、比較的お手頃な値段で入手できることも少なくありません。利用者も多く、一番見かける可能性が高いメーカーかもしれません。
個人的に一番身体に合うメーカーのため、持っている数も多く、ミレーだけで6個使っています。すべて頑丈でデザインも良く、用途に合わせた機能性も素晴らしいように思います。
現行品ではサースフェー(SAAS FEE)が万能でオススメです。数字以上に収納でき、縦に長いため背負ったときのバランスが抜群です。30+5と40+5の二種類ありますが、一つだけなら30+5の方が万能感があります。
ドイター(deuter/ドイツ)
こちらもミレーと同じように、小型から大型まで幅広いラインナップが用意されています。機能的でシルエットも美しく、様々なサイズが用意されている点も素晴らしいところです。特に小柄な女性には小さいサイズもあるドイターはおすすめできます。
現行シリーズではフューチュラ(FUTURA)かフューチュラプロ(FUTURA PRO)の30-38Lぐらいまでの商品がオススメです。細かいサイズが揃っているので、カラーバリエーション含め、気に入ったものを選ぶのが良いと思います。
オスプレー(Osprey/アメリカ)
少し大きめの日帰り用やテント泊用などの大型のザックで良く見かけます。ストック収納用のスペースなど、細かい機能の多さではダントツだと思います。若い男性に愛好者が多い印象です。
現行シリーズでは、ケストレルシリーズがベーシックでおすすめです。28Lか38Lですが、オスプレーは容量以上に収納したりフロントに入れたりもできるので、28Lの方が良いかなぁという印象です。女性であれば、テンペスト30が良いと思います。
ブラックダイヤモンド(Blackdiamond/アメリカ)
クライミングやスキーで有名なメーカーですが、ザックもクライミングやバックカントリースキーに特化したものを中心に素晴らしいザックを作っています。セールになることが多いため、個人的には安いときに機能特化のザックとして買うことが多いです。
良くも悪くも特化されているため、万能用という印象はありません。クライミング用とか冬山用とかならとても良いのですが、現行品で万能用として特におすすめできるようなものはありません。
パタゴニア(Patagonia/アメリカ)
価格は決して安くありませんが、一般登山者からクライマーまで幅広く愛されています。行動用の比較的小さいザック中心になりますが、特に冬山でみかけるザックとしての確率も高く、細かいところが良くできています。
現行品ではナイン・トレイルズ・パックがおすすめです。
マムート(Mammut/スイス)
クライミング用のロープや行動着(ソフトシェル、ハードシェルなど)のほか、靴などにも強いメーカーで中型のザックに強いです。シルエットが美しく、背負った時のバランスが素晴らしい。
値段が高く、セールになっても派手な色が多いため、個人的にはなかなか手を出せていません。現行品ではトレアガイドがおすすめです。
その他の定評のあるメーカー
下記は使用したことはないものの、一般的には定評のあるメーカーです。
- ノースフェイス
- グレゴリー
- カリマー
- モンベル
- ホグロフス
- ロウアルパイン
- マウンテンハードウェア
個人的には一般向けに多く展開しているブランドはいまいち信用できないため、街でタウン用ではないザックで良く見かけるものはつい除外してしまう傾向があります。
グレゴリーは特に大型ザックの評判が良いので試してはみるのですが、身体に合わず、ザックも垂直方向ではなく水平方向に大きくなるものが多いため、やはり好きになれません。ノースフェイスは冬用の本格的なものは素晴らしい商品が多いものの、夏用は一般向けの印象が強すぎて使う気になれません。
サイズは30L-40Lを選ぶ
1年を通じて一番使えるサイズが30-40Lのサイズです。私も持っているザックの約半分が30-40Lのものです。
30Lあれば丸一日使うような登山でも問題なく入ります。40Lあると、小屋で一泊したり、着替えを入れたり(=電車で移動など)しても大丈夫なサイズ感です。
小さめのものだと軽いというメリットがありそうですが、トレラン用でもない限り、体感上の重さはほぼ変わりません。全部で数時間の登山だと40Lでは大きく感じられますが、装備をちゃんと揃えると短い登山であろうと最低限の荷物は結局持ち歩くことになります。雨具や着替え、ツェルトやファーストエイドキット、緊急用の食料などですね。そう考えると40Lに近いちょっと大きめのサイズの方が個人的にはおすすめです。
あと、雨蓋を付いているものを選びましょう。雨蓋にはサングラスや日焼け止め、お菓子、薬などの良く使うものを効率的に収納でき、また、雨蓋を伸ばすことで容量以上の荷物を入れることもできます。雨蓋が付いていないものはデメリットが分かっている上級者向けです。
例えば、ミレーのトリロジー(35L)。デザインはすっきりしていて格好良いのですが、雨蓋もなく、サイドにネットもなく、各種のストラップやバンドも薄めです。クライミングやスキーのときには良いもののちょっとした登山向きではありません。個人的には、このトリロジーはロープを持っていくような岩場や冬山で活用していますがはじめに選ぶようなザックではないと思います。
身体にあった物を選ぶ。背負って試す。
ネットで購入するしかない場合を除き、一度はアウトドアショップに赴き、実際に背負って試しましょう。背負いやすいというレビューがいくらあっても、体格や感覚は千差万別です。同じメーカーだと大体背負い心地は似通ってくるため、ネットで買っても外れなくなってきますが、はじめて買うメーカーのものは絶対に試してからがおすすめです。
お店であれば店員さんが色々と教えてくれるかと思いますが、以下のように試すと良いと思います。
ウエストベルトをしっかり骨盤で締めた状態で肩のバンドがちょうど良い長さに合わせられるか
ザックは肩ではなく、腰に乗せる感覚が正しいです。そのため、背面長が調整できるザックを除き、まずはウエストベルトを骨盤のところ(骨盤の一番上の少し下ぐらい)でしっかり締めて、その状態で肩のバンドがちょうど良い長さに調整できるかを確認しましょう。肩には重量を感じるというよりも、しっかりと動かないように止まっているかどうかを重視すると良いと思います。
ザックが安定するか
ウエストベルトを締めて、肩のバンドの長さを合わせて、チェストベルトを締めた状態でザックを左右に振ってザックがずれないことを確認しましょう。できればある程度重い荷物を入れた状態で試せると理想的です。
山で歩くときには重心移動を多く伴うため、その度にザックが動くとそれだけで疲れが溜まっていきます。良いザックは無駄な動きをしません。
締めた状態でしばらくしても痛まないか
このあたりは靴の試し履きと同じです。ベルトやバンドが身体に合わないと痛くなってきたり違和感が出てきます。可能であれば30分程度は背負ってみましょう。ただ、荷物が軽い場合には違和感が出にくいのでお店をぐるりと一周歩くぐらいでも問題ないかもしれません。
違和感がどのようなものかわからない場合には、色々なザックをとりあえず試してみましょう。おそらく、合うもの、合わないものというのが分かってくるかと思います。基本的には歩いていてもザックのことが一切気にならないのが良いザックです。
ザックを下ろして、開けて、荷物の出し入れしてみて不便に感じないか
背負いやすさとは別の基準ですが、ザックを下ろして、開けて、荷物を出し入れしてまた背負い直してベルトを締め直す、という一連の動作を行ってみましょう。手順がやりやすいザックの方が合っているザックです。ただ、ザックによっては効率的な開け方を知らないだけのこともあるため、開けづらいところなどがあれば店員さんに聞いてみましょう。やり方を知っていればすごい開けやすい方法だったりする可能性があります。
服を入れる、服を取り出す、食べ物を取り出す、ゴミを入れるなど、よくありそうなシチュエーションを想像しながら試してみるとイメージが湧きやすいと思います。
自分好みのデザインまたは色である
ある程度候補が出たら最後は自分好みのデザイン・色であるものを選びましょう。気に入ったものを使う方が登山自体も楽しめます。中途半端な機能性よりは自分の好みの方を重要視すべきだと思います。
信頼できるメーカーで身体に合っていることまで確認できれば、あとは好みで選んでも問題ありません。靴の場合はあくまでも足に合うことが最重要であるため好みは後回しにせざるを得ないところはありますが、ザックはそこまでシビアに考えなくても大丈夫です。長期縦走用の80Lクラス以上のザックのときだけ考えれば十分です。
不満が出てきたら新しいものを追加すれば良い
ひとつのザックにあらゆることを求めるのは間違っています。日帰りなのかテント泊なのか、雪はあるのか、岩場があるのか、そういったところでもザックの選び方は変わってきます。買ったザックでは不満が出てきたらその不満を解消できるザックを買うのが正しい方法だと思います。その頃には山も色々と登って楽しくなってきているはずなので、そうするとザック選びもとても楽しいものになっていることでしょう。