日本の山を登るときには特に許可を得る必要はありません。ただ、地域や季節(特に冬)により、登山届の提出などが条例等によって求められている場合があります。
目次
原則: 登山届(登山計画書)を地元の警察に提出する
原則として、地元の警察(登ろうとする山の都道府県と同じです。もし複数の都道府県をまたがっている場合、どちらの県でも大丈夫です)は、すべての登山者に対し、登山届の提出を求めています。なお、名称は登山届だけではなく、登山計画書など、呼び方は様々ですが、本記事では登山届と呼ぶことにします。
登山届は、コンパスやヤマレコからオンラインで提出することもできますが、主要な登山口にはその場で書いて提出できるところが用意されていることが多いため、そこで提出しても問題ありません。
書式は必要な事項が記載されていれば自由
各警察では独自の登山届を用意していることが多いですが、必ずしもそれを使用しなければならないわけではなく、名前、住所、電話番号、緊急連絡先、装備、ルート、宿泊予定地などを記載すれば問題ありません。
ただ、必要な情報が網羅されているという意味でも、各警察が用意する登山届を使用するのが無難であるのは間違いありません。
条例等により登山届の提出が義務化されている山域
条例等により、登山届の提出が義務化されている地域があります。数は多くありませんが、北アルプスなどの主要な山域が含まれているため、注意が必要です。
都道府県 | 条例 | 山域 | 期間 |
---|---|---|---|
群馬県 | 群馬県谷川岳遭難防止条例 | 谷川岳の一部 | 3月1日から11月30日まで |
新潟県 | 新潟焼山における火山災害による遭難の防止に関する条例 | 焼岳山頂から半径2km以内 | 通年 |
富山県 | 富山県登山届出条例 | 剱岳 | 通年 |
長野県 | 長野県登山安全条例 | 長野県内の主要な山 – 北アルプス – 中央アルプス – 南アルプス – 御嶽山 – 八ヶ岳など | 通年 |
岐阜県 | 岐阜県北アルプス地区及び活火山地区における山岳遭難の防止に関する条例 | 岐阜県内の主な高山 – 北アルプス – 御嶽山 – 白山 | 通年 |
登山届の提出方法
登山届を提出する方法は色々とあります。多くの警察では、書面、ファックス、メールまたはオンラインでの提出を受理しています。また、警察以外にもヤマレコなどの登山関係のウェブサイトでは警察に代わって登山届の受付をしてくれています。これらのサイトが適切な警察に転送しているので、最終的には警察に届きます。登ろうとしている山がどの県に属するかといったことを確認しなくても済むのがメリットです。
色々と方法はありますが、登山口で登山届を書き、提出するのが一般的であると思います。多くの主要な登山口には、小さなポストのようなものがあり、そこに用紙とペンが置かれています。その場で名前や住所、電話番号、装備と計画(ルートや日帰りでない場合には宿泊予定地)を書式に従って記載し、ポストに入れるだけです。一部の山域では、登山の開始時だけではなく、下山時にも提出を求めているところもあります。下山時にも必要かどうかは、登山届かポストの付近に分かりやすく明示されているため、ちゃんとその場で読めば特に神経質になる必要はありません。
ただ、登山口によっては用紙を切らしていたり、ペンがなかったりすることもあります。そのような状況を避けるには、オンラインから提出したり、後述のCompassを利用すると良いでしょう。
「コンパス」について
「コンパス」は日本山岳ガイド協会等が運営するウェブサイトで登山届がオンラインで提出できます。日本語以外にも、英語、中国語、韓国語で提出できるようになっています。
なぜ登山届を提出しなくてはならないのか?
もし登山に出たまま家に帰らないようなことがあれば、家族や友人が警察に電話することになるかと思います。その場合、警察は登山届を探すところから始めます。もし、登山届を提出していれば、警察は登山届の計画に沿って、捜索を始めることができます。しかし、もし提出していなかった場合、警察は捜索範囲をとても広い状態から始めなくてはなりません。そのような場合には捜索にかかる費用も高くなりやすく、そして何よりも、発見してもらえる可能性が大きく下がってしまいます。
そのため、自分自身や家族のためにも、登山届の提出は義務となっていない場合であっても、提出することを強くおすすめします。
ちなみに、私自身が遭難したケースではありませんが、私が登山届を提出した日と同じ日、同じ山域で登山していた人が行方不明になってしまったようで、その際に警察からその人を見ていないかという趣旨の電話がかかってきたことがありました。登山者同士の助け合いにもなるという意味でも、登山届の意義があることを思い知らされました。
まとめ
- 登山をするのに許可を得る必要はありません。禁止区域以外は自由に登れます。
- 日本アルプスなど一部の山域では登山届の提出が義務化されています。
- 自分自身の安全のことを考えた場合、義務化されていない山域であっても登山届は提出した方が良いのは間違いありません。
- 登山届はオンラインか登山口での提出がおすすめです。