高山植物は落花であっても持ち帰りは禁止。落葉落枝にも注意が必要

登山で景色以外に目を楽しませてくれるものといえば、花や木々などの植物ではないでしょうか。高山植物が咲く時期や紅葉の時期には多くの人が花や紅葉目当てに山に入ります。

花を取ってはいけないということは何となく分かっていても、落ちている花であれば良いのか、登山道に落ちているモミジの葉っぱぐらいは良いのではないかと思ってしまうこともあるのではないでしょうか。これらは基本的に植物の種類、拾う場所によって変わってきます

国立公園・国定公園

磐梯山にある国立公園の表記

特別保護地区では、落ちている枝や葉も含め、すべての植物の採取が禁止されています(自然公園法21条3項7号)。それ以外の特別地域では指定高山植物の採取が禁止されています(自然公園法20条3項11号)。その他、普通地域という区域ではこれらの行為は法律上は禁止されていません。

ちなみに、国立公園は、「我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地」(自然公園法2条1項2号)、国定公園は、「国立公園に準ずる優れた自然の風景地」(自然公園法2条1項3号)であって環境大臣が指定するものを言います。自然公園とは、「国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園」(自然公園法2条1項1号)をいうとされています。

国立公園は管理者が国であるのに対し、国定公園は管理者が都道府県という点も相違しています。県立の自然公園も名前の通り、都道府県が管理者になります。

特別保護地区はどのように調べるのか?

残念ながらまとまったサイトがないため、地道に調べる必要があります

国立公園については、環境省の日本の国立公園のページから各公園のページに進み、「概要・計画書」から「区域図」を開くと区域が分かるようになっています。下記に代表的な山とともに一覧としてまとめましたのでそれぞれの公園ページから確認してください。

国立公園

多いだろうとは思っていましたが、日本百名山のうち、73座が国立公園内にありました。大きなエリアとしては中央アルプスが入っていないぐらいです。花で有名な山も概ね国立公園です。

都道府県名称代表的な山
北海道利尻礼文サロベツ国立公園利尻山
北海道知床国立公園国立公園羅臼岳
北海道阿寒摩周国立公園雌阿寒岳
北海道大雪山国立公園大雪山、トムラウシ山、十勝岳、ニペソツ山
北海道支笏洞爺国立公園羊蹄山、恵庭岳、有珠岳、オロフレ山
青森県・岩手県・秋田県十和田八幡平国立公園八甲田山、八幡平、岩手山、秋田駒ケ岳
山形県・福島県・新潟県磐梯朝日国立公園月山、大朝日岳、飯豊山、磐梯山、安達太良山、西吾妻山
福島県・栃木県・群馬県日光国立公園那須岳、日光白根山、男体山、皇海山
福島県・栃木県・群馬県・新潟県尾瀬国立公園会津駒ケ岳、燧ヶ岳、至仏山、帝釈山
埼玉県・東京都・山梨県・長野県秩父多摩甲斐国立公園金峰山、瑞牆山、甲武信ヶ岳、雲取山、大菩薩嶺
東京都・神奈川県・山梨県・静岡県富士箱根伊豆国立公園富士山、天城山
山梨県・長野県・静岡県南アルプス国立公園甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、鳳凰三山、北岳、間ノ岳、塩見岳、悪沢岳、赤石岳、聖岳、光岳
群馬県・新潟県・長野県上信越高原国立公園苗場山、四阿山、谷川岳、草津白根山、浅間山
新潟県・長野県妙高戸隠連山国立公園雨飾山、火打山、妙高山、高妻山、戸隠山、飯縄山
新潟県・富山県・長野県・岐阜県中部山岳国立公園白馬岳、剱岳、立山、薬師岳、黒部五郎岳、水晶岳、鷲羽岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳、槍ヶ岳、穂高岳、常念岳、笠ヶ岳、焼岳、乗鞍岳
富山県・石川県・福井県・岐阜県白山国立公園白山
三重県・奈良県・和歌山県吉野熊野国立公園大台ヶ原、大峰山
岡山県・鳥取県・島根県大山隠岐国立公園伯耆大山、蒜山
長崎県・熊本県・鹿児島県雲仙天草国立公園雲仙岳
熊本県・大分県阿蘇くじゅう国立公園九重連山、阿蘇山、由布岳
宮崎県・鹿児島県霧島錦江湾国立公園霧島山、開聞岳、桜島
鹿児島県屋久島国立公園宮之浦岳

国定公園

日本百名山のうち、16座が国定公園内にありました。

都道府県名称代表的な山
北海道日高山脈襟裳国定公園幌尻岳
青森県津軽国定公園岩木山
岩手県早池峰国定公園早池峰山
宮城県・山形県蔵王国定公園蔵王連峰
秋田県・山形県鳥海国定公園鳥海山
福島県・新潟県越後三山只見国定公園越後駒ヶ岳、平ヶ岳
茨城県・千葉県水郷筑波国定公園筑波山
群馬県・長野県妙義荒船佐久高原国定公園妙義山、荒船山
東京都明治の森高尾国定公園高尾山
神奈川県丹沢大山国定公園丹沢山
長野県・山梨県八ヶ岳中信高原国定公園八ヶ岳、蓼科山、美ヶ原、霧ヶ峰
三重県・滋賀県鈴鹿国定公園御在所岳
滋賀県・京都府琵琶湖国定公園伊吹山
徳島県・高知県剣山国定公園剣山
愛媛県・高知県石鎚国定公園石鎚山
大分県・宮崎県祖母傾国定公園祖母山

県立自然公園

自然公園法の定義では、都道府県が指定する「優れた自然の風景地」を言います(自然公園法2条1項4号)。

国立公園・国定公園は自然公園法が規制等についての直接の根拠法令となっていますが、県立自然公園は各都道府県の条例により指定されます(自然公園法72条)。各条例では、自然公園法の規定に準じた規制がされていますが、規制内容は同一ではありません1。そのため、県立自然公園の場合には各都道府県の条例を探して、どこで何が規制されているかを調べる必要があります

代表的な山域としては、中央アルプス・御嶽山が県立自然公園内にあります。

都道府県名称代表的な山
北海道斜里岳道立自然公園斜里岳
新潟県魚沼連峰県立自然公園巻機山
埼玉県県立両神自然公園両神山
長野県中央アルプス県立自然公園木曽駒ケ岳、空木岳
長野県御岳県立自然公園御嶽山
岐阜県胞山県立自然公園恵那山
岐阜県伊吹県立自然公園伊吹山
福井県奥越高原県立自然公園荒島岳

赤城山と武尊山は少し特殊

赤城山は自然公園法に基づかない県立公園内にあり、武尊山は唯一何らの公園にも属していません。ちなみに、両方とも群馬県の山です。

植物の種類

秋田駒ケ岳のコマクサ

前述の通り、国立公園・国定公園は特別保護地区が指定されており、その区域内ではすべての植物の採取が禁止されています。特別地域における指定高山植物は環境省のページに公園ごとにまとめられています。

まとめ

百名山や花で有名な山の多くは上記の通り国立公園・国定公園・県立自然公園に指定されていることが多くなっています。これらの公園内での高山植物の採取は、登山者のマナーとして採取しないということではなく、違法であることが多いという点には注意が必要です。そして、特別保護地区では花だけではなく、落ち葉や木の枝の持ち帰りも禁止されています。

調べるのが面倒であれば一切持ち帰らないというのがベストだと思います。持ち帰りたいと考えている場合には、「国立公園・国定公園の特別保護地区ではないこと」と「指定植物でないこと」をちゃんと調べて確認し、適法に持ち帰るようにしましょう。


  1. 条例は法律での規制以上の規制ができないため、国立公園・国定公園以上に厳しい規制はされないのが原則です(自然公園法73条1項参照)。 

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