InReachとヒトココの比較画像

Garmin InReach Explorer+と「ヒトココ」「ヤマモリ」などの他の遭難対策グッズとの共通点と相違点

現在、国内での遭難対策として普及しはじめている「ココヘリ」や「ヒトココ」、「ヤマモリ」といったサービスや機器があります。Garmin InReach Explorer+はこれらの機器とどのような点で異なるのかを説明したいと思います。

おさらい:Garmin InReach Explore+ って何?何ができるの?

Garmin が販売する衛星通信可能なハンドヘルド GPS 端末です。GPS を使用した地図用端末に衛星を使用した下記の通信ができる物と考えるとわかりやすいと思います。SOS の受付というのがただの携帯等とは特に違うところですね。

  • 専用センターでの SOS 受付(救助要請)
  • SMS/E-mail 等を通じた文字でのコミュニケーション(英数半角160文字)
  • 自分の現在地の共有(Facebook/Twitter等での共有も可能)
  • 現在地の天気の取得

逆に下記のようなことはできないので注意が必要です。

  • 通話
  • 写真等の送付
  • ブラウジング(いわゆるホームページ等の閲覧)
  • 通常の E-mail 等の取得(POP/IMAP)

要は、通話を含め、特定の通信方法以外の通信はできないと考えると良いかと思います。InReach 端末同士のみ専用のメールアドレス宛のやり取りになりますが、基本的にはメールアドレスや電話番号を持つわけではなく、あくまでも専用ウェブサイトを通じた通信になります。そのため、表面的な電話番号が存在しないという意味でも一般的な衛星携帯電話とも大きく異なります。

「ココヘリ」「ヒトココ」「ヤマモリ」とは?

ココヘリサービスイメージ

ココヘリ」とは、福岡にあるAUTHENTIC JAPAN株式会社が運営する、「ヒトココ」という電波の発信デバイスと連携したヘリで発信者の発見を容易にするためのサービスのことをいいます。「ヤマモリ」は、jROで販売・貸与する「ヒトココ」のオリジナルモデルの名称です。

ヤマモリ説明漫画

ヤマモリには使い方やメリットなどを訴求するためのマンガが公開されていました。

それぞれの名称が似ているため、少し混乱しそうになりますが、特に複数の種類の商品があるわけではなく、基本的には単一の商品・サービスです。

できることはとてもシンプルです。電波の受信機(親機)を使用して電波を発信する「ヒトココ」を発見できるということです。900MHzの周波数帯の電波を使用しており、仕組みとしては雪崩救助等でも使用するビーコンに近いものです。親機は捜索する提携ヘリに搭載されており、その親機で「ヒトココ」を発見するというサービスが「ココヘリ」です。理想的な環境では最大 5km まで電波を飛ばせるようです。詳細な仕組み等はココヘリのサービスページに書かれています。

まとめ
ヒトココ・・・機器のメーカーでの商品名
ヤマモリ・・・jROで販売・貸与している「ヒトココ」のオリジナルモデル
ココヘリ・・・ヒトココを使用した会員向けの捜索サービス

Garmin InReach Explorer+とヒトココの共通点

捜索救助用の機器という点が共通します。また、ともに機器を携帯することを前提とした格安での保険プランがあるという点も共通しています。

そして、両機器とも完全防水(IPX7相当)であり、-20度まで動作可能としている点も共通するため、冬山を含め、年間を通じた山での活動が範囲となっている点も共通しています。

それ以外に特に共通点はなく、下記の相違点の通り、基本的にはコンセプトが共通しているだけで、機能や機器それ自体は大きく異なります

Garmin InReach Explorer+とヒトココの相違点

機能や価格など、大きく異なります。ひとつずつ見ていきましょう。

コミュニケーション機能の有無

一番大きな違いは、コミュニケーションを取れるか取れないかの違いだと思います。InReachは衛星を通じて地球上のどこでも任意のSMS・メールアドレスと文字でのコミュニケーションが取れる、SOSが送れるという点が最大のメリットです。衛星を使うため、携帯電話の電波が入る必要もありません

ヒトココはあくまでも電波の発信機であるため、それ自体ではコミュニケーションが取れません。つまり、遭難したとしても、ヒトココを通じて救助を受けることはできないため、携帯電話で救助を要請したり、同行者や家で待っている家族などの第三者からの救助要請が必須です。

地図(GPS)機能の有無

InReachは通常のGPS端末としても使用可能です。特に冬山ではスマートフォンが動作しないことも少なくないため、GPS端末があると安心できますが、InReachの場合にはこのGPS端末としても活用することができます。

親機・子機の区別

ヒトココは親機を用いることで子機を探すことができます。そのため、グループで行動する場合に親機があれば、はぐれた人を探すことにも使えます。

他方、InReachには親機・子機の区別はありません。ただ、端末相互にコミュニケーションが可能であるため、お互いを捜索可能という意味では親機・子機より万能的に使用することができます。

端末代金と維持費

まず、端末代金はGarmin InReach Explore+が定価で54,800円に対し、ヒトココは9,800円(ともに税別)と大きく異なります。ちなみに、ヒトココの親機は 19,800円です。

維持費は、InReachが最安で年間17,750円程度1、ヒトココ(正確にはココヘリ)が年間3,942円(ともに税込)となり、4倍以上の開きがあります。

重量とサイズ

InReachが 68 x 164 x 38 mm / 213g に対し、ヒトココが 60 x 40 x 12 mm / 20g と、圧倒的にヒトココが小さく軽いです。

使用可能時間(電池の持ち)

InReachが最大75時間〜30日間であるのに対し、ヒトココが3ヶ月と、圧倒的にヒトココが使用可能時間が長くなっています。ただ、ともにUSB充電が可能であるため、通常の山行レベルでは事実上差異がないと思われます。

サービス範囲

InReachは一部の紛争地帯を除く全世界が対象であるのに対し、ヒトココは北海道・本州・四国・九州のみが対象となります。沖縄・島嶼部は対象外とされているため、百名山のある利尻島(利尻山)や屋久島(宮之浦岳)はエリア外となってしまうことには注意が必要です。

相違点・共通点のまとめ

比較項目Garmin InReach Explorer+ヒトココ
メーカーGarmin(アメリカ)AUTHENTIC JAPAN(日本)
防水機能◯ (IPX7)◯ (IPX7)
使用可能温度-20 〜 60度-20 〜 40度
サイズ68 x 164 x 38 mm60 x 40 x 12 mm
重量213g20g
サービス範囲(ほぼ)全世界日本国内(沖縄・島嶼部を除く)
位置特定◯ (GPS)◯ (電波)
コミュニケーション機能×
地図(GPS)機能×
機器相互の通信△ (親機のみが子機を探せる)
専用保険◯ (GEOS)◯ (ココヘリ)
端末価格(定価・税別)54,800円9,800円
年間維持費(税込)17,750円3,942円

どちらを選択すべきか?

究極的な目的は捜索時の発見を容易にするという点で同じであるため、それ以外の機能や自分の山行スタイル、予算に応じて決めるのが良いと思います。

いざ遭難した時に最悪の自体が防げれば良いという人にはヒトココがおすすめ

Garmin InReach Explorer+ の最大のメリットはコミュニケーション機能にあります。電波が通じない山間部や山奥でも衛星を通じて家族や友人と連絡をとることができます。逆に言えば、それを求めなければGarmin InReach Explorer+をあえて使用する必要はありません。ちゃんと登山届を提出し、電波が通じない状況でも家族等から捜索要請が入るような人であれば、ヒトココでも十分です。

最悪な状況ではありますが、もし転落して即死してしまったような場合でも、ヒトココの電源が入っていれば死体を発見してもらうことも容易になります。死体が発見されれば、生命保険金の支払を受けられたり、相続も開始できたりするため、残される家族のためにもなります。なお、Garmin InReach Explorer+でもちゃんと自分の位置を発信し続ける設定にしておければ位置を特定できるため、いざ即死という場合でも位置が特定できるという意味では違いはありません。

ただ、転落時に機器も壊れてしまった場合は大きく状況が異なります。Garmin InReach Explorer+はそれまでに発信した通信ログから場所を絞り込むことができますが、ヒトココは捜索時に電波を発していないと意味がないため、転落時に壊れるとまったく意味がなくなります。かなり限定的な状況ではありますが、一応認識しておいた方が良いでしょう。

海外に行く、山深いところに入り込む、一人暮らしという人にはGarmin InReach Explorer+がおすすめ

孤高の人のような感じですが、電波が入らないところまで山に入り、しかも単独が多い、山に行くことを誰にも言わないといった人にはGarmin InReach Explorer+がおすすめです。自分で救助を求める必要があるからです。また、そもそもサービス範囲が違うため、比較していませんが、Garmin InReach Explorer+は海外でも保険を含めてカバーされるため、海外登山を視野にいれている人はGarmin InReach Explorer+を購入する価値があると思います。

新たにGPS端末を買おうとしている人にもGarmin InReach Explorer+はおすすめ

ヒトココとの比較という意味では関係ありませんが、もしGPS端末を買おうとしているのであれば、Garmin InReach Explorer+も候補として考えて良いと思います。使いたい時期だけ衛星契約を締結することもできますし、衛星契約がない場合でも通常のGPS端末としては使用可能です。通常のGPS端末よりは一回り大きくなりますが、もしよりハードな山行がしたくなったり、海外登山にも興味が出たりした場合にはGarmin InReach Explorer+の購入を検討することになるかと思うので、それを見据えての購入も選択肢としてはありだと思っています。


  1. 年間プランを想定。最安の契約は、衛星契約が143.4USD、保険契約が17.95USDとなり、2018年8月13日現在のドル円レートは110円となるため、このような金額となります。また、年間プランについては別途初期契約料 19.95USD かかりますが、この点はヒトココも初回契約料3,000円がかかるため維持費からは除いています。 

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